もって書いておきますが、私の読書というのは、すべて太平洋戦争について考えるためのものです

時代は明治維新前後、主人公の青山半蔵のモデルは、藤村の父親です。

青山半蔵は南木曽の馬籠街道の維持に腐心しながら、本居宣長以降のの国学に心酔しています。国学とはなにかというと、仏教や儒教が入ってくる前の日本について、すなわち本当の日本について研究する学問だそうです。
この国学によって、中世封建というものを「超克」して、近代というものを打ち立てる、これが青山半蔵やさらには維新の志士たちの目標だったわけです。
明治維新は成し遂げられた。維新の志士たちは目的を達したのかというと、そうではない。中世封建は、古代によって「超克」されたわけではなく、西洋文明によって上書きされただけです。青山半蔵は、その精神の分裂に耐えられずに気が狂って死ぬ。

「夜明け前」はかなりの長編ですが、ざっくり要約すれば、こんな感じです。

人間の意識を上層部と下層部に分けたとします。下層部は中世的な混濁した意識なのに、意識の上層部だけ西洋的な、科学や人権、民主主義や個の確立、などの全く別のものに書き換えられてしまった場合、その人間集団にはかなりのストレスが予想されます。
青山半蔵は、精神の分裂に耐えられなかった。
結局、大日本帝国も、その精神の分裂に耐えられなくなって、あの太平洋戦争に雪崩れ込んでいったのだと思います。ある種の自己崩壊ですね。

しかし精神的な状況でいえば、現代よりも戦前の方がまだマシだと思います。戦前は精神の分裂に苦しみながらも、それを自覚できたから。現代はどうでしょうか。苦しんでいる人がいるとして、自分が何故苦しんでいるのか分からないでいるのではないでしょうか。

戦前の日本を理解する事によって、現代の日本が理解できる、そう私は確信します。





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